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【高還元SESのリアル】ビジネスモデルと業界の最新事情

こんにちは。セルバ/セルバコンサルティング代表の中山です。

近年SES業界で急増した高還元SESですが、何かと「高還元SESは闇だ」「やめとけ」「搾取ビジネス」など、ネガティブな言葉で語られがちです。
しかし僕の目線から見れば、X(旧Twitter)やnoteなどでインプレッション目的の極端な表現が先行し、必要以上にネガティブなイメージを植え付けているように感じています。

SES企業の経営者のポジショントークに思えるかもしれませんが、高還元SESについての事実を冷静に整理し、高還元SESというビジネスモデルが本来どういうもので、現在どのような動きがあるのかお伝えします。

目次

エンジニアへの還元率は単価の65~70%

高還元SESの企業は、大体どこもエンジニアへの還元率は単価の65~70%です。
「うちは80%以上です!」と謳っている企業もたまにありますが、そういった場合はリーダー枠やマネジメント込みの案件が多いです。
還元率の計算方法は企業によってバラバラで、以下の条件により上下します。

  • 社会保険料を含むか含まないか
  • 福利厚生を含むかどうか
  • 交通費・営業コストをどこまで含むか

「還元率〇%」という数字は一つの指標にはなりますが、還元率だけを鵜呑みにせず、面談時には具体的に「単価と支払い給与の内訳」を聞くことをおすすめします。

セルバコンサルティングの還元率のグラフ

※セルバコンサルティングでは、候補者との面談時に「単価」「支払い給与」「手取り予測」をすべて開示してお話しています。

セルバコンサルティングの年収早見表

なぜ高還元に出来るのか

一言でいうと、営業コストを抑えているからです。
通常のSES企業だと営業1人につきエンジニア10人くらいを担当するのが一般的ですが、高還元SESだと営業1人につき30人くらいのエンジニアを担当していたりします。

通常のSES企業では営業が企業と直接交渉する形で新規開拓や案件獲得を担いますが、高還元SES企業は営業コストを抑えるために「BP(ビジネスパートナー)ネットワーク」を使って案件を獲得しています。
これは、いわばIT業界版の「レインズ」(不動産の物件流通網)(※1)のようなもので、案件を流通市場で融通し合う仕組みです。

※1
条件の良い案件は自社で抱え、自社では対応出来なかった案件をレインズを通して市場に出すのが一般的です。
たまに条件の良い案件が出てきた時には、連絡が殺到して一瞬で決まるのもレインズと同じですね。

営業コストを抑える代わりに「商流が深くなりやすい」という構造的な弱点もありますが、それでもエンジニアへの還元率が高くなるのは、固定費を抑えているからです。

ただし、営業コストを抑えるということは、営業にコストをかけているSES企業と比べるとどうしても営業力は下がるということです。
営業にかけるコストを減らしたことから優良案件を直接取りに行けない場合もあり、長期的には限界が来るとも言われています。

これは愚痴ですが、案件を取るのってめちゃ大変です。
企業は多大なコストと時間を掛けて案件を取ってきていますが、それを分かっていないフリーランスの人が多い。
手数料を搾取と言うなら自分で直接クライアント見つけてきてください。

SESはマッチングビジネス

前提として、SES(システムエンジニアリングサービス)とは何かを簡単に整理すると、「企業が必要としている技術者(エンジニア)を、準委任契約で提供する」ビジネスモデルです。
エンジニアは雇用主(SES企業)と雇用契約を結びながら、取引先企業(クライアント企業)のプロジェクトに常駐して働きます。

案件内容や契約期間、単価などはプロジェクトごとに異なりますが、いわば「案件と人材をマッチングする」ことがこのビジネスの本質です。

通常のSES企業が営業にコストをかけて案件の獲得に力を入れているのに対し、高還元SES企業は還元率を高くすることによってエンジニアの獲得に力を入れているところが、大きな違いと言えます。

高還元SESは単価が低い傾向にある

有名な高還元SES企業の平均成約単価は60万円台なので、一般的なSES企業に比べて低い傾向にあります。
これは商流が深いからというより、エンジニア単独で参画出来る案件=ロースキル寄りの案件が多いためです。

大量採用している高還元SES企業などは、実務経験数ヶ月~2年目くらいのエンジニアがボリュームゾーンです。
ロースキル寄りの案件を年次の浅いエンジニアとマッチさせるのが、高還元SES企業では主流になっています。

経験年数の浅いエンジニアはマッチングしやすい

経験の浅いエンジニア(実務経験1〜3年)はクライアント側から求められるスキル要件も比較的低く、「補助的ポジション」「単純作業工程」「ドキュメント作成やテスト補助」などの案件にマッチしやすいです。

こうした案件はIT業界の中でも常に一定数あり、需給が安定しています。
特に、DX推進でシステム案件が急増している昨今では、エンジニア数を求める案件(人数枠)も多いため、若手がアサインされやすい状況です。

単価が安くても採算が合う構造

若手エンジニアは単価が低く、高単価を狙えるベテランと比べれば収益性は下がるように見えますが、「還元率を80%にしても、残り20%の粗利で採算が合うように設計されている」ことが多いです。

たとえば月単価60万円のエンジニアに80%還元した場合

  • 社会保険含めたエンジニアへの支払額:48万円
  • 会社の取り分(粗利):12万円

1人あたり月12万の粗利でも、固定費(オフィスなし、営業最小、インフラ最小)を抑えていれば黒字化できます。
これを数十人単位で回せば十分利益が出ます。

採用しやすい人材をターゲットにしている

経験豊富なエンジニアは、スキルがあっても50代以上だと案件が決まりにくい、地方在住だとリモート案件しか選択肢がないなどの理由もあり、受託開発や自社サービス企業、フリーランス等のSES以外の道を進むことが多く、SESでは採用が難しい傾向にあります。

一方で、第二新卒や独学出身などでまだ経験の浅い若手エンジニアは「まず実務経験を積みたい」と考えており、SESという働き方にも柔軟で、企業側も常駐可能な若手には多くを求めないため案件が決まりやすいです。
高還元SES企業はこうした人材をスカウト・媒体活用で集め、ローコストでスケールしています。

最近では転職・就職先として若手から圧倒的な人気を誇っていた自社サービス企業に陰りが見えており、SESが再評価されつつあることから、高還元SESにとっては追い風でもあります。

高還元SES企業はすでに飽和状態

高還元SESのブームは、ここ数年で一気に過熱しました。
求人媒体で「還元率〇%」とアピールすることが一般化し、スカウトメールでも乱発されるようになった結果、エンジニアからも「また高還元SESか」と食傷気味に思われている部分もあります。

SESが再評価されているとはいえ、市場にはすでに300社以上の高還元SES企業が存在しているという話もあり、もはや「高還元」だけでは差別化が難しい状態です。

飽和状態の中で生まれる歪み

高還元を謳うSES企業の乱立により、下記の問題が可視化されるようになりました。

  • 若手というだけで引く手あまたであるかのようなアプローチをするが、単価が低いロースキル案件が多い
  • 還元率の高さを過剰にアピールするが、内訳を見ると従来のSESより低い
  • 案件選択制と言いながら選べるほどの案件を持っていない

入社前にきちんと説明して、“現実とエンジニアが想定する理想のギャップ”を出来るだけなくし、双方納得した上で契約するならそこまで問題にはなりません。
しかし都合の悪い実態を隠したまま、都合のいい謳い文句でエンジニアを釣るような真似をして入社させる企業が少なくありません。

真っ当に運営しているSES企業からすると迷惑以外の何者でもないですが、このような現状が、「高還元SES=闇」と言われる背景につながっています。

高還元SES企業特有の課題

短期的には「エンジニアを採用して案件にマッチさせる」というスケーラブルな構造で利益は出ます。
ただし、以下の理由で高還元SES企業は永続的に儲け続けるのが難しいと言われています。

  • 若手が成長して「上流工程に携わりたい」という理由で離職する
  • 単価が低い案件は需給が偏りやすく、価格競争に陥る
  • 採用競争が激化しており、広告・媒体費が高騰している
  • 中長期的なキャリア支援がないとブランドが定着しない

そのため、高還元SES企業でも「上流案件の獲得」「チーム参画制度の導入」「コンサル志向」など、高還元以外の特徴を打ち出す企業が増えてきています

2025年、高還元SESは次のステージへ

では、今後の高還元SESはどうなるのか。
2025年現在、高還元SES企業は以下の取り組みを行っているところが増えています。

  • エンド直案件(元請)を自社で獲得
  • チーム体制での案件参画(マネジメント込み)
  • PMO/コンサル領域への進出
  • M&Aによる企業拡大・多角化

名前は出さないですが有名な高還元SES企業では、自社営業体制を整えてエンド直案件の獲得を進めています。
これにより、単価アップ・還元率アップが見込めるだけでなく、商流の浅い案件でキャリアの質も向上させようという動きです。

また、SES業界では「エンジニア数=会社の力」と言われており、他社を買収して急拡大するケースも増えています。
昨年だけでも、多くの会社のM&Aが話題になりました。

セルバコンサルティングの特徴

ならお前のところはどうなんだという話ですが、セルバコンサルティングもいわゆる「高還元SES」ではありますが、もう一つ大きな特徴を持っています。
それは「高単価のITコンサル案件 × 高還元」です。

1.高単価のITコンサル型案件

セルバコンサルティングは、元々セルバからITコンサルティングに関する業務を独立させた会社なので、その強みを活かし、ITコンサル案件や受託開発案件を多く保有しています。
要件定義・PMO・IT戦略支援など、上流工程や事業視点での参画可能な案件が多いので、案件の平均単価が高いです。

2.キャリア支援を前提としたアサイン

「短期的な売上のためのアサイン」「とにかく人員を埋めるためのアサイン」は行いません。
エンジニアの将来像をヒアリングしたうえで、「どうキャリアアップに繋がるか」を前提に案件を提案しています。

3.将来は自社内ITコンサルへ

SESとして外部案件で経験を積んだ後、受託開発を担当する自社内のITコンサルチームにジョインする道もあります。
「SESで終わる」のではなく、「SESを通過点にする」ことを前提にした仕組みです。

多用な職種で参画可能
PG/SE
PMO(プロジェクト管理支援)
ITD(IT部門支援)
ITコンサルタント
インフラ構築・クラウド移行支援

セルバコンサルティングではキャリアアップしたいエンジニアを募集しています

セルバコンサルティングでは、キャリアアップしたいエンジニアの方や、ITコンサルやPMOに興味があるエンジニアの方を積極的に募集しています。

ご自身のキャリアについてじっくり相談してみたい方や、SESという働き方を前向きに捉えている方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
あなたのこれからのキャリア設計を、一緒に考える機会になれば嬉しく思います。

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この記事を書いた人

私たちセルバコンサルティングは、DXコンサルティング/推進支援のプロフェッショナル集団として、単なるITシステム導入ではなくITシステムを使った本質的な業務改革を行います。
我々にとってのDXとは、デジタル化を通じたオペレーション効率化・ガバナンス強化・コスト削減・データ利活用推進を含めた、顧客への本質的な価値提供を指します。

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