こんにちは。セルバ/セルバコンサルティング代表の中山です。
「SES」と検索すると、関連ワードに「闇」や「やめとけ」といったネガティブな言葉が表示されます。
YouTubeでも「SESは地獄」「やめとけ」といった動画がたくさん出てきます。
不安をあおる内容の方が再生されやすいので、ある意味仕方ない部分もありますが、全部が正しいとは限りません。
実際にいろいろな発信を見て「それは確かに…」と思うものもあれば、「いや、それはちょっと違うんじゃない?」と感じるものもあります。
僕自身、セルバコンサルティングでSES事業を立ち上げ、実際にエンジニアの配属やキャリア支援に深く関わってきました。
これまでに見てきた職務経歴書は数え切れず、どういう人が成長し、どういう人がつまずくのかについては、自信をもってお話できます。
この記事では、そんな僕の立場から見た「SESの闇」「やめとけと言われる理由」について、誇張無しで現実ベースで解説します。
後半では、「じゃあ、どうすればいいのか?」についても具体的に書いています。
SESを目指すか迷っている方、業界の実態を知りたい方の参考になれば。
SESはなぜ「やめとけ」と言われるのか?
SESをやめとけと言われている理由を解説します。
ITといいながら家電量販店勤務だった
SESやめとけでよく話題にあがるのが、いわゆる「家電系SES」。
求人には「IT職」「エンジニア」と書いてあり、説明会でも「開発案件あり」「ステップアップできます」と語られますが、実態は開発案件がない、あるいは“ある”といってもごくわずかで、入社した人の多くが接客や販売の仕事を割り振られているというケースです。
いざ配属されてみると、スマホ販売の説明員やWi-Fiの案内係として、家電量販店や携帯ショップに立つことになります。
コールセンターやヘルプデスクへの派遣もその延長線上にあり、いずれもITとは名ばかりで、エンジニアとしての実務経験は積めません。
なぜこんなことが起こるのかというと、「ITエンジニア募集」と書いたほうが人が集まりやすいからです。
販売職と書けば応募が来ないので、意図的にIT職と書いて釣っているんですね。
中には「勉強すれば開発案件に行ける」と説明する企業もありますが、そもそも開発案件自体がほとんど存在せず、最初から派遣ビジネスが目的という企業が多いです。
こういった企業に入ってしまうと、開発に移ることはほぼ不可能です。
「少しでもITに関連する仕事を足掛かりに、いずれは開発案件に……」と考えて数年過ごしてしまうと、年齢によってはエンジニアとしてのキャリアは絶望的になります。
僕は職務経歴書を数千件以上見てきましたが、こういったSES企業に入社してエンジニアになれた人を、ほとんど見たことがありません。
「自分や友人は家電量販店への派遣を足掛かりにSES企業に入社してエンジニアになれた」という実例があれば教えてください。
経歴詐称を強要される
「未経験歓迎」と書かれていて実際に入社はできたものの、案件先には「実務経験3年ってことにしておいて」と言われたというケースです。
これもまた、SES業界で実際に起きている問題です。
少し前にもニュースになりましたね。

あるSES企業では、未経験者に「Java開発経験3年」「Springフレームワーク使用経験あり」といった虚偽の職務経歴書を作らせ、商談(面談)に送り出すというケースが報告されています。
もちろん実際にそんなスキルは無いので、現場ではすぐにバレてしまいます。
その結果、配属取り消し・案件打ち切りになるだけでなく、本人にも大きなストレスと自己否定感を与えることになります。
企業側は「うまくハマれば現場で育つ」と言うかもしれませんが、未経験者が実務3年経験者の顔をして現場に行くのは、無理ゲーです。
プレッシャーもきつく、自信も失いやすく、最悪の場合はメンタルを崩して退職に追い込まれます。
経歴を詐称するということは、クライアントとなる開発会社側にも損害を与える信用詐欺です。
知らず知らずのうちに詐欺の片棒を担がされてしまうという構造です。
業界自体の信用を壊すこうした企業は、ごく一部とはいえ確実に存在します。当然すぐに悪評が広まるので、長続きしません。
同業者の僕ですら「なんでそんな無茶なことをするのか?」と毎回不思議に思うほどです。
こういった企業には絶対に関わらないことをおすすめします。開発会社側からしても非常に迷惑な存在なので無くなって欲しい。
ロースキル塩漬け─スキルが身につかずキャリアが詰む
未経験者や若手がSESでまずアサインされるのは、テスターや運用・監視オペレーターといった比較的簡単な業務が多いです。ここまではOK。
問題は、その状態がずっと続くケースです。
こうした業務は手順がマニュアル化されており、誰でもできる反面、自分で考える力や設計・開発のスキルが身につきにくいのが特徴です。
最初の1〜2年なら「実務経験」として評価される場面もありますが、それが3年、4年と続くと「この人は開発ができない人」とみなされ、転職市場でも評価されにくくなります。
中には、SES企業自体がロースキル案件しか取ってきていない場合もあります。
企業が開発案件を持っていないので、どれだけ努力しても開発業務に移るチャンスすらありません。
エンジニアからすると非常に恐ろしいのは、SES企業からするとロースキル案件だけでも経営出来てしまうので、開発案件を取るモチベーションが沸かないことですね。
以前はエンジニアを育てる方針だったSES企業が、育つと転職して離職率が高くなってしまったため、あえて育てないようにロースキル案件に塩漬けにしたら離職率が下がったという怖い話もあります。
もし資格を取ったり、難易度の高い技術を勉強しても、いつまでも単調な業務しか任されない場合は、その会社からは早めに抜け出した方が賢明です。
スキルのないまま40代、50代になるとアサインできる案件がなくなります。
SESはロースキル案件を数十年やってきた人より、20代の未経験が選ばれる世界なので、ロースキル案件に塩漬けされたまま40代になるとキャリアが詰みます。
この手の企業の厄介な点は、家電系SES企業ほどあからさまではないので、見分けがつきにくいところ。
ただし見抜けないわけではないので、後半で解説します。
給与が低く、報酬が不透明
SES業界の構造として、「中抜き」が発生しやすいという問題があります。
エンド企業 → 一次請け → 二次請け → 三次請け…と、一つの案件が複数の企業を経由すると、それぞれの企業が中間マージンを抜き、最終的にエンジニア本人の取り分はかなり少なくなってしまうのです。
クライアントから月60万円で請け負っていたとしても、実際にエンジニアの手元に入るのは月20万円台、という話も珍しくありません。
しかも、多くのSES企業は自分の“契約単価”すら教えてくれないため、「いくらで自分が売られているのか」も分からないまま働いている人も少なくないです。
給与の不透明さに不満を持ったエンジニアが、「やめとけ」と発信する背景には、こうした構造的な問題があります。
正直、僕は未経験から始めるなら「最初の給料が低い」のは気にしなくてもいいと思っています。
「未経験でもフルリモートで年収500万円以上可能!」のように謳うスクール等もありますが、実際には難しく、誇大広告に近いのが現実です。
初めのうちは給料よりも開発経験が詰めるか?を重視した方がいいですね。
経験者の基準として「開発の実務経験3年以上」を最低ラインにしている企業が多いので、3年間しっかり開発経験を積めば、市場価値はグッと上がり、年収500万円〜600万円は十分狙えます。
「石の上にも三年」はあながち精神論的な迷信でもありません。
スキルがついても給料が上がらなかったら、転職すればいいだけの話です。
常に勉強が求められる
最後に、意外と多いのが「ずっと勉強が必要なのがしんどい」と感じてエンジニアが辞めていくケースです。
SESに限らず、ITエンジニアという職業は常に新しい技術が登場し、求められるスキルも年々変化していきます。
特にSESでは、自分のスキルによってアサインされる案件の質・単価が大きく変わるため、「現場に入ったら終わり」ではなく、常に学び続ける姿勢が不可欠です。
現場で使う技術が変われば追いつく必要がありますし、スキルアップを怠ればロースキル案件に逆戻りすることもあります。
そのため仕事以外の時間にも勉強が必要になってきます。
エンジニアという職種は、どの分野でも基本的に「ずっと勉強が必要」です。
勉強が必要だということが「闇」だと感じるなら、エンジニアという仕事自体やめておいた方がよいです。
ただし、最初の1年くらい頑張れば、その後は勉強が苦じゃなくなる人も多いです。
ここはもう本人の適性の問題ですね。
騙されず、キャリアを築くためのSES企業の見極め方
「SESはやめとけ」と言われる理由を理解した上で、実際にどのような企業を選べばよいか。
「SESでなく受託か自社サービスのエンジニアになる」という選択肢もありますが、エンジニアの求人の多くはSESなので狭き門ですし、自社サービスのエンジニアの市場価値が下がりつつあるという現実もあります。

確かにSES業界はブラックな企業も存在しますが、多くは開発案件を持っていて経歴詐称もしないまともな企業ですし(そうでないと長く事業続けていられません)、エンジニアのキャリア支援や技術育成に力を入れている企業もあります。
ここでは、未経験からでも安心して働けるSES企業を見つけるための4つのポイントを紹介します。
クチコミで“実態”をチェック|開発案件があるかを見抜く
まず第一に、「企業の採用ページや求人広告だけを信用しないこと」が重要です。
求人では「自社開発あり」「受託開発あり」「開発案件多数」など、魅力的な言葉が並んでいても、実態と乖離しているケースは珍しくありません。
そこで活用したいのが、口コミサイト(OpenWork、転職会議、カイシャの評判など)やX(旧Twitter)などのSNSです。
匿名で投稿された内容ではありますが、匿名だからこそ内部のリアルな実情が垣間見える貴重な情報源であり、不満がある人ほど投稿する傾向があるので、「どういった理由で離職した人が多いのか」を知れるという価値があります。
以下の点に注目してみてください。
- 「家電量販店や携帯ショップに派遣された」という声がないか
- 「テストや運用ばかりでスキルアップが望めない」という声が複数ないか
- 「入社前の説明と配属後の内容が違いすぎた」という声が複数ないか
「開発案件がある」と書かれていても、実際には全社員の1割にしか回っていないような飾り案件で、ほとんどの案件は家電量販店やロースキル案件という落とし穴もあります。
実際にどれだけの人数が開発案件に関わっているのか、口コミでの具体的な人数感や部署名などから判断する癖をつけましょう。
また、口コミと合わせてコーポレートサイト内の「エンジニア紹介ページ」や「社員ブログ」もチェックしてみてください。コーポレートサイトにない場合は、noteで発信している場合が多いです。
本当に開発案件をメインで持っている企業は、会社やメンバーの活動を積極的に発信しています。
まだ設立間もない企業で情報が少ない場合、親会社やグループ会社の情報をチェックするのもありです。
それらの情報が非常に乏しく、実態がまったく見えない企業は要注意です。
設立年や規模をチェック|経歴詐称リスクの高い会社を避ける
次にチェックすべきなのが、その企業の「設立年」と「規模」です。
経歴詐称を強要するようなSES企業は、設立から3年未満の新興企業であることが多く、社員数(被保険者数)も10人未満であるケースが多いからです。
こうした企業はまだ実績が少なく、営業力が弱く信用スコアも低いため、案件を取るために経歴を盛るしかないという状況に陥りやすいです。
- 設立から3年以上か
- 被保険者数が極端に少なくないか(5人以下など)
- 会社ブログやSNSが止まっている、もしくは存在しない
- 代表の名前を検索しても何も出てこない
もちろん、新興企業だからと言って悪質とは限りません。誠実に運営しているベンチャー企業も多くあります。
ただ、情報が乏しすぎる企業には注意が必要です。信頼できるエンジニアコミュニティや転職エージェントに話を聞くなどして、実態を確認しましょう。
設立10年以上や社員数50人以上の企業は、ある程度業界での信頼もあり、長期的に安定した案件を保有している傾向が強いです。
もちろん規模だけでは判断できませんが、「会社として継続して存在できていること」は、信頼性の一つの指標になるのは間違いありません。
資格やポートフォリオで選ばれる側になる準備をする
企業選びと同時に大切なのが、「自分自身の市場価値を高める準備」です。
SES企業は基本的に、エンジニアをクライアント企業に紹介し、そこで業務を行ってもらうスタイル。その際に重要になるのがスキルと信頼性です。
たとえ未経験でも、「業務に必要な知識をしっかり学んでいる」「向上心がある」ことを証明できれば、良い案件にアサインされる可能性はぐっと高まります。
実績もなく、どのくらいのスキルがあるかわからない状態だと、アサインできるのはどうしてもテスターやヘルプデスクなどのロースキル案件が中心になります。
- ITパスポートや基本情報技術者などの国家資格を取得する
- UdemyやProgateなどでWeb系言語(HTML/CSS/JavaScript/PHPなど)を学ぶ
- GitHubに簡単なポートフォリオサイトを作ってアップする
- Qiitaなどで学んだことをアウトプットし、勉強している姿勢を見せる
こうした取り組みは、面談時に「この人は現時点でのスキルは未熟だけど、向上心があるからいずれ戦力になるだろう」と思わせる材料になります。
万が一ブラックなSES企業に入ってしまった場合でも、業務で求められるスキルとポートフォリオがあれば、次の会社を選ぶ武器になります。
堅い仕事をしていた人にはITコンサルやPMOという選択肢もある
「開発は難しそう。でもIT業界には興味がある」という人におすすめなのが、「ITコンサル」や「PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)」という職種です。
特に公務員や銀行員、事務職などで「正確に資料を作る」「工程を管理する」「関係者と調整する」経験を積んできた人には向いています。

プロジェクトの進捗管理・ドキュメント作成・会議運営などを担当するポジションで、エンジニアよりも段取り力や調整力が求められます。
- 地方自治体や市役所などで事務職をしていた人
- 銀行でローン審査や書類作成をしていた人
- 工場や倉庫などで工程管理・人員配置をしていた人
たまに銀行員からエンジニアに転職したいという人がいるんですが、正直エンジニアよりPMOをおすすめしたいぐらい。
PMOとして現場経験を積めば、業界用語やITシステムの流れにも自然と慣れるので、そこからITコンサルやPMにステップアップしていく人も多いです。
「エンジニアになるか、ならないか」だけがIT業界への入口ではないです。
自分の強みを活かせるポジションから業界に入ることで、無理なくIT人材としてのキャリアがスタートできます。
自分の判断軸を持とう
「SESはやめとけ」といった声は、ゴシップ的な側面もあり、ネット上で数多く見かけます。
事実として、家電量販店への派遣をITエンジニアと偽って人を集める企業や、経歴詐称を強要するような悪質なSES企業は存在します。
そうした体験談がSNSやYouTubeなどで拡散され、「SES=闇」といったイメージが一人歩きしている側面もあります。
「やめとけ」の声に振り回されない
SES業界全体が、10年前と比べると明らかにクリーンになっています。
悪質な行為は口コミサイトやSNSで広まるので、真っ当に事業をしていなければ人が集まらなくなる時代です。
企業側の方でも、より健全な働き方やキャリア支援体制を整えようという動きが進んでいます。
大切なのは、「やめとけ」の言葉に過剰反応して1件でもネガティブな口コミがある企業を避けるのではなく、自分の軸で見極めることです。
そのために必要なのは、「どの企業を避けるか」だけでなく、「自分はどこを目指したいのか、そのために必要なスキルは何なのか」を言語化することです。
人間は「得したい」よりも「損したくない」という心理が強いと言われています。そこに漬け込むような不安を煽る情報だけに流されず、自分自身の判断軸を持ちましょう。
内定が出たからといって飛びつかない
信用スコアの高い大手IT企業や、きちんと開発案件を持っている企業に入ることができれば、悪質SES企業にありがちなトラブルとは無縁であることがほとんどです。
問題なのは、「ちょっと怪しいな…」と感じる企業しか選択肢がない・なくなったときに、妥協して入社してしまうケースです。
「せっかく内定をもらったし、どこかに入らなきゃ」と焦って判断すると、高確率で「思っていたのと違う」「こんなはずじゃなかった」と後悔することになります。
その結果、早期離職→次の転職活動もうまくいかない→職歴に傷がつく、という悪循環に陥り、キャリアが詰む可能性が高まります。
だからこそ重要なのは、選ばない勇気も持つことです。
内定が出たからといって、すぐ飛びつかず、一旦冷静になって考えてみてください。
怪しいと感じている会社で無理にスタートを切るより、転職先が決まらなければスキルを磨き直したり、他の職種も視野に入れるといった判断の方が、長期的に見てはるかにプラスになります。
焦らず、誠実に、正しい情報をもとに行動すれば、SESという働き方は立派なキャリアの第一歩になります。
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