こんにちは。セルバ/セルバコンサルティング代表の中山です。
エンジニアと企業のマッチングに携わっていると、日々多くの案件の情報が舞い込んできます。
エンジニアの方からも多数のご相談をいただきますが、その中で特に気になるのが「運用・保守のみを数年続けてきた」という方のキャリアについてです。
こういった方には、「リーダー経験や上流工程(要件定義など)に挑戦した方がいい」と強くお伝えしています。
運用保守を長く続けると「キャリアが詰む」
少なくともIT業界の現状として、下流工程の延長線上にあるシニアエンジニアは企業からあまり求められておらず、厳しい評価を受けてしまう傾向にあります。
実際、私たちも普段企業の採用担当と面談する中で、「50代の運用保守を数十年やってきたエンジニアよりも、20代で経験1年だけど今後開発スキルを伸ばせそうな若手を採用したい」という声を、驚くほど頻繁に耳にします。
そういった厳しい現実の背景と、運用保守メインのエンジニアがキャリアアップを目指す際のポイント、さらには「本当に開発や上流工程に挑戦する必要があるのか?」という賛否両論についても掘り下げていきます。
将来性がないわけではないが『給与が上がらない』
まず誤解のないようお伝えしたいのが、運用や保守といった下流工程が「まったく価値がない」「将来性がない」というわけでは決してありません。
IT業界において、システムの安定稼働を守り続ける運用保守は、企業活動の基盤を支える重要な役割を担っています。
24時間365日システムが稼働し続けることを求められる現代の社会では、運用保守の技術や経験がなければ成り立ちません。
しかし、企業が欲しがるのは「運用保守の仕事にプラスアルファの価値を付加出来る」人材です。
たとえば、運用保守の現場で得た知見をシステム設計や要件定義に活かせるとか、運用工程の自動化を進めるスキルや経験がある、セキュリティ対策を構築出来るネットワークの専門知識がある、などです。
そうしたスキルセットを持つ人は引く手あまたですし、プロジェクトの中でもより上流のポジションやリーダー的な役割を任せてもらえる可能性が高まります。
一方で、ただ「指示されたとおりにマニュアルに沿って作業をしているだけ」というスタイルだと、年齢や経験年数に関係なく「代わりはいくらでもいる」という見られ方をされます。
企業の採用担当は、運用保守だけを延々と続けてきた50代のエンジニアに高い報酬を支払うよりも、将来的に成長の余地が大きい20代を採用して育てたいと考えます。
これが、厳しい現実として「下流工程だけをやってきたシニアエンジニアの需要が極めて低い」背景です。
運用・保守のままだと給与が上がらない理由
給与が上がりにくい理由を端的にいえば、「企業にとって付加価値が見えにくい」からです。
運用保守の仕事は、規模の大きなプロジェクトであればあるほど細分化されがちです。
もちろんそこには管理の難しさや責任が伴いますが、「この部分さえ出来れば誰にでもお願い出来る」という認識を持たれやすいのも事実です。
エンジニアの給与が上がる場面というのは、「この人に任せることでプロジェクトの生産性が向上する」「顧客の要望を汲み取り、高い次元で設計書やプログラムに落とし込める」といった、『代替困難な価値』を示せたときです。
要件定義の場面でヒアリングが出来たり、技術選定の判断が出来たり、リーダーとしてメンバーを牽引出来たりすることで、企業側は「この人を手放したらプロジェクトが回らなくなる」と評価します。
『上流工程やリーダー経験の有無』が、給与アップの大きなターニングポイントとなるケースが非常に多いです。
なぜ開発・上流工程を任せてもらえないのか? よくある2つのケース
運用保守のみを続けてきて、なかなか開発プロジェクトや上流工程にアサインされない理由は、以下の2つに大別出来ます。
ケース1:本人の努力不足
たとえば資格取得を推奨している会社で、「資格を取得出来たら上流工程や開発案件に携わることが出来る」という明確な基準があるにもかかわらず、それをクリア出来ていないパターンです。
会社としては、資格というわかりやすい基準である程度のスキルを測りたい意向があるのに、本人が必要な勉強をしていない、あるいは何らかの理由で資格試験に受からないまま放置しているという状態です。
こういった場合は、まずは資格取得という目標をクリアすることで環境を変えられる可能性があります。
書籍や研修を使って学習し、合格を目指す道筋を立てましょう。
会社側が「資格を取ったら○○を担当させる」と公言しているのであれば、それを活用しない手はありません。
ケース2:会社が開発の案件をそもそも積極的に取っていない
一方で、本人としては開発や上流工程に挑戦する意欲はあるものの、会社がそもそも下流工程や運用保守をメインとする案件しか取っていないケースもあります。
この場合、たとえ社内で資格を取ったりスキルアップの意欲を示しても、実際に参加出来る開発案件がないので意味がありません。
会社の事業方針やクライアントとの取引構造上、どうしても運用保守寄りのプロジェクトばかりになってしまうからです。
この場合、今の職場で頑張り続けても、技術的な成長は頭打ちになりやすいといえます。
いくら自己学習でスキルアップしても、現場で実践出来る場がないため、実務経験を積むことが出来ません。
こういった環境に身を置いている場合、キャリアアップしたいなら、思い切って転職を検討した方がよいです。
実際に転職して開発案件に関わり始めた途端、給与やポジションが劇的に変わるエンジニアも少なくありません。
「運用保守だけで十分」「上流工程はやりたくない」という声もある
一方で、「安定した職場で運用保守を続けるのが自分のスタイルに合っている」「上流工程に興味がないし、管理業務やコミュニケーションも苦手だからリーダーはやりたくない」というエンジニアも珍しくありません。
キャリアは人それぞれの希望や価値観によって形作られるものなので、無理に上流工程やリーダーを目指す必要はありません。
ただし、その道を選択するのであれば、将来的に需要の高いスキルを自分なりに身につけておいた方がよいです。
例えば、運用保守の現場でも近年はクラウド化や自動化ツールの導入が進んでいるので、AWSやAzureなどのクラウドベンダーの資格、Infrastructure as Code(IaC)のスキル、コンテナ技術(DockerやKubernetes)などを学ぶことで、会社やプロジェクトによっては高い専門性を示すことが出来ます。
運用保守を極めるなら極めるで、その道を深堀りし、人材としての価値を高められるよう意識しましょう。
キャリアアップしたいなら会社選びは慎重に
「運用保守から開発にステップアップしたい」「上流工程に携わってキャリアアップしたい」というエンジニアが最初にすべきことは、今の会社でそれが叶うかどうかを見極めることです。
先ほど述べたケースのように、本人の努力不足なら挽回の余地がありますが、会社の事業方針や体制の問題で環境を変えないとどうにもならないことは多々あります。
もし自分が後者に当てはまると感じたら、転職市場をリサーチしてみるのがおすすめです。
実務経験は多少なりともあるならば、若手エンジニアとして歓迎している企業は多くあります。
また、開発案件を積極的に扱っている会社は、意欲のあるエンジニアを育てたいと考えていることが多いので、将来的なキャリアパスも用意されているケースが少なくありません。
転職するならどんな企業を選べばいいのか?
転職を検討する場合、具体的には以下のような観点で企業を選ぶと良いでしょう。
上流工程や開発案件をどれだけ扱っているか
企業サイトや求人票を見るだけでなく、実際に面接や面談の段階で下記について確認しましょう。
- どんなプロジェクトがあるのか?
- 社内のエンジニアの構成比率は?
- 実際の配属先はどれくらいの可能性があるか?
研修制度やメンター制度の有無
特に運用保守から開発へチャレンジする場合、いきなり高度なスキルを求められるとハードルが高く、心身を壊して続けられなくなることもあります。
研修制度やOJTの体制が整っている企業であれば、段階的にスキルを習得していくことが出来るので、「わからないことは遠慮なく聞ける環境か」は確認しましょう。
社員のキャリアアップ事例
社内で、「運用保守メインだった人が開発や上流工程に携わるようになった事例があるか」を確認してみましょう。
実際にそういった人が存在している会社は、意欲があればキャリアアップ出来る社内風土や仕組みが出来上がっている可能性が高いです。
将来的なマネジメント志向をサポートしてくれるか
ただ「開発が出来る」というだけでなく、リーダー職やPM職を目指したいという場合、その道が明確に示されている企業だと安心です。
評価制度や研修、資格取得支援などが整っているかを見極めましょう。
中山からのメッセージ
セルバコンサルティングは、エンジニアと企業の最適なマッチングを目指す立場から、多くの20代のエンジニアの方々とお話しする機会があります。
その中で強く感じるのは、「今の仕事を続けていれば自然とキャリアアップできるだろう」「会社がなんとかしてくれるだろう」という“待ちの姿勢”が強い人が多いということです。
20代であれば、尚更若さという強みが評価されやすく、新しいことへの吸収力や伸びしろに期待する企業は多く存在します。
もし今の環境で「運用保守ばかりで給与も上がらないし、キャリアも頭打ち」という状態に陥っているのなら、ぜひ一度、今後のキャリアプランを再考してみてください。
セルバコンサルティングではキャリアアップで給与を増やしていきたいエンジニアに最適なキャリアロードマップを提示します。
すぐに転職の意思はなくても話を聞くだけで将来の為になりますので、一度お気軽にご相談ください。
まずは行動あるのみ
IT業界は慢性的な人材不足とはいえ、企業が求めるスキルや人物像は目まぐるしく変化しています。
業界全体がDXやクラウド、AIなどを取り入れ、より高度な技術力と対応力を求めるようになっている今、「指示通りの運用保守しか出来ないエンジニア」のままでは、年齢を重ねるほど苦しい状況に追い込まれがちです。
逆にいえば、「開発や上流工程にも興味がある」「新しいことをどんどん吸収していきたい」という人には、大きなチャンスがある時代だともいえます。
技術力だけでなく、コミュニケーション力やマネジメント力、提案力といった総合力が求められている今こそ、キャリアアップのためのアクションを起こしてみませんか。
現状に不満があるのであれば、まずは小さなステップでも構いません。
本を読み、資格を取り、周囲に開発案件や上流工程に携わりたいとアピールし、可能性がないなら転職を検討する。
このようにして一歩ずつ前進していくことで、未来のキャリアの選択肢は格段に広がるはずです。
20代という貴重な時間を、どうか大切に使ってください。